派遣法の改正

2020年4月1日に改正派遣法が施行されました。

 

同一労働同一賃金

2020年の改正は「同一労働同一賃金」を実現するのが目的です。

同一労働同一賃金とは正社員(正規社員)や派遣社員(非正規社員)といった雇用形態にかかわらず、以下が同じ場合には同じ金額の賃金(待遇)を支払うというものです。

  • 職務内容
  • 責任
  • 配置と職務内容の変更範囲

2種類の賃金決定方式

派遣社員の賃金を決定する方法には2種類あります。

  • 派遣先均等・均衡方式
  • 労使協定方式
派遣先均等・均衡方式 労使協定方式
賃金の基準 派遣先の正社員 一般労働者の平均賃金水準以上
賃金の変動 派遣先によって変わる 派遣先に関わらず一定

派遣先均等・均衡方式

派遣先均等・均衡方式とは派遣社員の待遇を派遣先の正社員に合わせる方式です。

派遣先によって正社員の賃金は異なるため、派遣先が変わると賃金も変わります。

労使協定方式

労使協定方式とは派遣元に関係なく一般労働者の平均賃金以上になるように、派遣元が賃金を決める方式です。

中小企業への適用は2021年4月から

同一労働同一賃金は2020年4月1日からまずは大企業に適用されます。

中小企業への適用は2021年4月からです。

2015年の派遣法改正

2015年(平成27年)に改正された労働者派遣法では特定派遣が廃止されました。

2015年の改正後も経過措置として2018年(平成30年)9月29日までは特定派遣事業ができたのですが、現在はできなくなっています。

派遣期間は業務内容でなく雇用形態に制限される

会社の仕事は正社員がする、だけど最大3年まではテンポラリとして派遣労働者を受け入れてもいいですよ、というのが2015年8月までの派遣法でした。

2015年の改正労働者派遣法ではこの派遣期間の制限が大きく変わりました。

期間制限 派遣法改正前 派遣法改正後
自由化業務 専門28業務
派遣先単位 原則1年最長3年 制限無し 3年(延長可能)
派遣社員単位 有期雇用 3年
無期雇用 制限無し

自由化業務と専門業務の違いを撤廃

改正前の派遣法では派遣期間は原則1年、労働組合の意見により最長3年までとされていました。

しかし、この派遣期間の制限には例外がありました。

専門的な知識・技術を必要とする28業務(平成24年の労働者派遣法改正前は26業務でした)であれば派遣期間の制限は適用されなかったのです。

  1. ソフトウエア開発
  2. 機械設計
  3. 機械操作
  4. 通訳・翻訳・速記
  5. 秘書
  6. ファイリング
  7. 調査
  8. 財務
  9. 貿易
  10. デモンストレーション
  11. 添乗
  12. 案内・受付
  13. 研究開発
  14. 事業の実施体制等の企画・立案
  15. 書籍等の制作・編集
  16. 広告デザイン
  17. OAインストラクション
  18. セールスエンジニアリングの営業
  19. 放送機器操作
  20. 放送番組等の制作
  21. 建築物清掃
  22. 建築設備運転
  23. 駐車場管理
  24. インテリアコーディネーター
  25. アナウンサー
  26. テレマーケティング
  27. 放送番組等における大道具・小道具
  28. 水道施設等の設備運転

これらの専門28業務に限って派遣期間の制限は無しとされていました。

派遣法改正により、専門28業務と自由化業務により派遣期間の違いが撤廃され、すべての派遣労働者に同じ期間制限が適用されることになりました。

派遣先単位の期間制限は事実上撤廃?

派遣先単位の期間制限とは同一事業所が派遣労働者を受け入れできる期間の制限です。

改正前の自由化業務は原則1年、過半数組合等への意見聴取により最長3年まで延長可、となっていました。

改正後は一応3年としているものの、過半数労働組合への意見聴取によりさらに3年延長、その後も同様に3年間延長、ができてしまいます。

これでは自由化業務の派遣期間制限が事実上撤廃されたようなものです。

この3年という歯止めがなくなったことで経営者は高い正社員でなく、安い派遣を選択することになります。

従来の派遣法はこの派遣に置き換えられる正社員を守っていたわけです。

派遣社員単位の期間制限は雇用形態による

前述の通り、派遣先の事業所は事実上、いつまでも派遣を使い続けることができます。

しかし、派遣元に有期雇用されている派遣社員、つまり登録型の派遣社員を3年を超えて使い続けることはできません。

別の派遣社員への入れ替えが必須になります。

それに対し、派遣元に無期雇用、つまり正社員の派遣社員であれば期間制限はありません。

特定派遣を廃止

IT業界に大きく影響したのがこれです。

2015年の改正前には特定派遣(特定労働者派遣事業)と一般派遣(一般労働者派遣事業)の区別がありました。

一般派遣 特定派遣
派遣労働者の雇用形態登録
常時雇用
常時雇用
許認可 許可制 届出制

2015年の改正によって特定派遣と一般派遣の区別はなくなり、派遣事業は許可制に一本化されました。

ただし、新設以外の特定派遣事業なら3年の猶予期間が有りましたが、2018年(平成30年)9月29日でその猶予期間も終わりました。

2018年(平成30年)9月30日以降も派遣事業を続ける場合、以下の要件を満たし、許可を取る必要があります。

  • 基準資産額が 2,000万円 × 事業所数、かつ負債総額の1/7以上
  • 預金が 1,500万円 × 事業所数 ある
  • 20平米以上の事務所

特定派遣からSESへ

特定派遣の廃止まで、IT業界では常時雇用(正社員)で派遣労働者を雇用し、特定派遣するビジネスが当たり前になっていました。

しかし、自称IT会社、実体は社員の机すら無い派遣会社が上記の要件を満たすのは簡単ではありませんでした。

ではそのような会社は特定派遣廃止でどうなったかというと、「SES契約」で社員を顧客事業所に常駐させるようになりました。

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